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ともしどブログ

目指せ脱アンドロイド。

木の葉のように【ノベル練習帳】

 

――何があっても、目を開けてはならなかった。

 

 

ボクは恐怖心を掻き消すために、「水中を漂う枯れ葉は、きっとこんな気分なのだろう。」と想像した。

 

そう、身体を喰われても、何も感じられない、枯れ葉なのだ。

 

そうであるならば、首から下の感覚がないことにも説明がつく。

 

 

「どうしてこうなった・・・。」

 

 

落胆に染まる言葉を、ボクは意識の海の中に放出する。

 

 

「残念ながら、それはもう叶わない。」

 

 

ぴしゃん、と音を立てて言葉が落ちてきた。

 

それはボクの意志を嘲笑うかのように、存在感を放ちながら“残酷さ”を物語る。

 

そのときボクは、絶望を突き付けられると、自然にすべてを諦められることを知った。

 

 

 

***

 

 

 

「ほうら、キャッチ、キャッチ!」

 

 

木の枝を揺する友人が大きな声を上げた。

 

ボトっと音を立てて、じんわりと果汁が地面に染み込んでいく。

 

 

「ごめん、ごめん。」

 

 

宙を舞う木の葉の美しさに、ボクは心を奪われていた。

 

彼らは役目を終えたように見えて、最後まで己の存在を全うしている。

 

地に落ちてもなお、彼らの命は消えていないのだ。

 

 

 

***

 

 

 

上体を覆うようにして、見覚えのある顔が覗き込んできた。

 

 

「ふふ、可愛い。」

 

 

彼女はシニカルに笑う。

 

 

「話すこともできないのよね。可哀想。」

 

 

細長くて冷たい指が頬を這う。

 

半開きの口の中に入っているようだが、噛むことはおろか舐めることすらできない。

 

 

「美味しいっ。」

 

 

唾液で濡れた指を口に運び、不敵な笑みを浮かべている。

 

 

「あなたは私のものっ。」