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だらしがないす

スリハー・スリハー!

彼はミルクティーを飲んでいた【おわりに向かってみた】

「ふぅ…」と一息ついて、視線を落とす。

 

「疲れたなぁ、もう」

 

私の頭を悩ませているのは、あの男。

 

「なんでここにはコーヒーしかないんだ!彼女はミルクティーしか飲めない体なのに!」

 

とイタリア語で話している、あの男だ。

 

私はしぶしぶ席を立ち、彼のもとに歩を進める。

 

「ほら、恥ずかしいからやめて」

 

「そんな、ボクは君のためにこんなに一生懸命になっているんじゃないか」

 

困ったものだ。

 

どうして、男には「一生懸命」を押し付けてくるヤツが多いのだろう。

 

私は何ひとつ頼んじゃいないのに。

 

どいつもこいつも、勝手に私が喜ぶことを決める。

 

私のほしいものを、されたいことを、誰も聞いてきてくれない。

 

ま、ほしいものもされたいこともひとつもないのだけれど。

 

「もう、私帰るね」

 

イタリア人なのかすらわからない男に別れを告げて、私はその場を離れた。

 

たかだか一夜を共にしたくらいで、すぐにわかった気になる。

 

みんな、そうだった。

 

「君の好きなものはこれだろ」

 

「僕なら君を幸せにできる」

 

「君はこういう性格なんだね」

 

残念ながら、一度として当たっていたことはない。

 

オンナを舐めるな。

 

知り合ったばかりの男に素顔を見せるほど、私は落ちぶれちゃいない。

 

――そんなことを考えていたら、LINEの電子音が耳に入った。

 

「昨日は、どうも」

 

私のことをさぞ気に入ったのだろう。

 

謙遜したフリをしているのがよくわかる。

 

既読をつけようか悩んでいると、続けざまにメッセージが入った。

 

「今夜、会えないかな」

 

男は決まって、「会いたい」とは言わない。

 

やつらは自分のものにしたと思った途端に、「会いたい」と言うようになるのだ。

 

「ホント、みんな一緒ね」

 

「あなたも面白い人ね」と返信し、会うことにした。

 

待ち合わせに指定されたカフェに着いて、「ほらね」と思う。

 

彼はミルクティーを飲んでいた。