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ともしどコンテンツ

恥を忍んで、恋も忍ぶ。

甘い匂いに誘われて【朝食はミルクティー】

ベッドメイキングを済ませて、ほっと息をつく。

 

「きちんと整えられたベッドは清々しくていいよね」とカレが言うもんだから、かれこれ2年は毎日続けている。

 

「別れてもう、半年になるのにね」

 

ひとりごとをぽつりと零し、私は淹れたての紅茶をカップに注いだ。

 

体が温まると、不思議と心も穏やかになる。

 

ふにゃふにゃとした気分のまま、考え事をするのが好き。

 

カレと別れてから半年も経っているのにベッドメイキングをしている自分を客観的に見てしまったものだから、今日のテーマは「習慣」にすることにした。

 

案外、習慣は自分で決めたものよりも、誰かの影響で始めたもののほうが多いのではないかと思う。

 

ベッドメイキングにしてもそう。

 

カレが「清々しい」なんて嬉しそうな顔をするものだから、今でも私は自分のためにベッドメイキングをしている。

 

もちろん、それだけではない。

 

手帳に書く文字の色を変えたのも、LINEのきせかえをしたのも、パスケースを使うようになったのも、お酒を飲まなくなったのも、全部カレの影響だ。

 

それなのに、カレはもういない。

 

当たり前のように、カレのいない日常を、カレと過ごした日々のままに過ごしている。

 

「ふぅ」と一息ついて、肩に乗りかけたちょっとの寂しさを振り払った。

 

「さよならと言ったはずなのに、ぜんぜんね」

 

殺風景な玄関を見つめながら、私は紅茶を飲み干した。