だらしがないす

スリハー・スリハー!

うちのオバケが家出したっぽい

私がいま借りて住んでいる家というかアパートは、いわゆる事故物件。人が亡くなったことのある部屋をそう呼ぶらしい。事故って。どゆこと。

十何年も前の話だし、オバケは怖いけどネタになりそうだし、家賃は安いし、他の人が何人も住んだあとだから借りることにした。


で、引っ越したての初夜。

寝ようとしたら目が回って動けなくなった。

ぐるぐるぐるぐるーって。視界が回るの。

上を向くとそうなるみたいで、立ち上がったりうつぶせになれば直る。

「天井付近に何かいる・・・!」

直感的にそう思った私は、慌てて部屋を飛び出した。

もともとオバケが怖くて夜にひとりで階段を上れなかった私である。目が合おうものなら卒倒して泡吹いて連れていかれる。勘弁しろ。

とりあえずまんが喫茶に避難して、心が穏やかになりそうな漫画を選んで読みふけり、心を落ち着かせた。ちなみに『夏目友人帳』である。

そしてその次の日。

頭から角の生えた鬼嫁が待つ家に帰るときの旦那のような気持ちで玄関のドアの前を何往復もしてその間に覚悟を決めてから家に入った。生きているだけ鬼のほうがいくらもマシである。

家の中はシーンとしていた。ヤツはなんのアピールもしてこないようだ。

そしてその日の夜。布団に横になってみても、なんともない。「なんだ寝れんじゃん」と安心したのもつかの間。

今度は起きた瞬間に目が回って動けなくなった。なんだこの時間差攻撃。照れ屋か。

さすがの私も怒った。怒り心頭である。私は天井付近にいるであろうヤツに向けて

「心臓に悪いことすんな!ちょっと降りてこい。説教だ。」

と言った。

私は水道水をコップにそそぎ、ヤツがいるであろう場所の脇に置いた。

「まあ、飲め。」

水は減らない。いきなり話しかけられて焦っているのだろう。慣れてないんだろうな。コミュ障め。人のこと言えないけど。人じゃないか。

「気づいてほしいなら、俺に迷惑をかけないようにしろ。いいか。もっと他に方法あるだろ。怒るぞ。あ、もう怒ってるか。ごめんな。」

・・・・・・・・・。

なんの反応もない。

「まあまあ、泣くなって。寂しかったんだよな。わかる。わかるよ。俺も寂しかった。」

・・・・・・・・・。

なんの反応もない。

「お前なあ。まあいいや。無理にとは言わない。とにかく俺に迷惑をかけるようなアピールの仕方は控えろ。いいな。」

その後、しばらくは何事もなかった。

その間に占い師見習いのお姉さんに教えてもらった除霊の方法(清めの水の力を超強くして入ってこれなくするやつ?)を試したりもした。

「霊は、いつまでもそこにとどまってはいないの。でも、場所がわかると帰ってきちゃうから、帰る場所がわからなくすればいいんだよ」という言葉を全面的に信じたのだ。

キツいことを言って家を出ていかせたまま、帰ってこれないようにしたのである。

ちょっとひどいことをしたかな、と思った。

引け目を感じた私は、ちょっとだけスキを作ってあげることにした。

パワフルな水をどかしたのである。

「1日だけだからな」

そしてその夜。

目は回らなかった。

次の日の朝も、同じく。

そして私は、パワフルな水の位置を元に戻した。

ヤツは家出したまま帰ってきていないのか。それとも、じつはまだ家のなかにいるのにアピールできずにいるのか。

私には霊感がないのでわからない。