だらしがないす

スリハー・スリハー!

さらばシベリア鉄道/大滝詠一【80年代音楽おさらいvol.1】

 

1988年生まれ。物心ついたのは1991年。1991年生まれみたいなもんですよ。

 

なので困ったことに、それはそれはそれは困ったことに、80年代の音楽をリアルタイムに肌で感じたことがありません。

 

そんな状態で「80年代の音楽」がベースにあるイベントに言っても「にわか乙」と思われるだけのような気がするので、Xデーまでに80年代の音楽についていくつかおさらいしておこうと思います。vol.1←イマココ

 

タイトルに“シベリア”と入っていればシベリアで労働している方は読んでくれるかな、なんて下心があったことも隠さないでおきますね。

 

『さらばシベリア鉄道』については歌詞全文を載せて紹介しています。

 

***

 

「80年代のキング・オブ・ポップは“大瀧詠一”です」って、誰かが言ってました。誰が言ったのかは忘れました。不確かです。ただこれだけは間違いない。

 

大滝詠一さんは100万回聴いても飽きない。」

 

私世代(昭和63年生まれ)が高校生から大学生くらいの頃に信頼していた音楽バイブルは“SNOOZER”です。当時は厨二病全盛なんで、例に盛れず『ROCKIN‘ON JAPAN』とか『ROCKIN’ON』のように見るからにメジャーな王には目もくれず、ただただ斜めに見たい一心で“SNOOZER”を愛読していました(SNOOZERの編集長さんは元ROCHIN’ONの副編集長さんらしいけども……)。

 

大滝詠一さんを知ったのもSNOOZERがきっかけです。『A LONG VACATION』がプッシュされてて。発売は1981年らしいすね。もちろん私世代は生まれとりません。その時代を生きていた人にとっては、私世代にとっての『First Love』みたいなもんでしょうか。誰もが知ってて当たり前の、国民的ヒットアルバム。そういう位置づけですか。

 

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「『A LONG VACATION(以下急にめんどくさいので:ロンバケ)』ってどれくらい売れたの?1000万枚?」と思って調べてみたところ、1981年に発売後、1991年、2001年、2011年と10年ごとにリマスター版が発売されていたことを知りました。30年経っても色あせない、また聴きたいと思うアルバムだとわかりますね。まさにその通りですし。

 

あと非常に大事なことなので触れておきますが、大滝詠一さんのほとんどの曲の歌詞を『松本隆さん』という方が担当しており、また彼は『風の谷のナウシカ』の作詞者でもあるので大御所の作詞家に見えそう(大御所の作詞家でもあるの)ですが、彼は『はっぴいえんど』のメンバーです。

 

はっぴいえんど』は後にYMOのメンバーになる何でも屋ボーカルの細野晴臣さん、後に奇跡のヒットメイカーと言われたギターボーカルの大滝詠一さん、後にキャラメル・ママティン・パン・アレー)のメンバーでギターの鈴木茂さん、そしてドラムで楽曲の作詞担当の松本隆さんで結成されたバンド。

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そして、『はっぴいえんど』は解散後、細野晴臣さんは鈴木茂さんと、大滝詠一さんは松本隆さんと活動を共にしています。

 

松本隆さんが大滝詠一さんの楽曲の作詞のほとんどを担当していたことを思えば、『はっぴいえんど』がなければ大滝詠一さんの大ヒットはなかったかもしれない、と言えるでしょう。

 

ただ一応補足すると、不仲が原因で『はっぴいえんど』が分裂したわけではないと思われます。松本隆さんはYMOの代表曲『君に、胸キュン』の作詞者でもあるからです。

 

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↑信じられますか。1983年ですよ。

 

いかに『はっぴいえんど』がモンスターバンドだったのかが伝わったでしょうか。私のiTunesには『はっぴいえんど』も『キャラメル・ママ』も『ティン・パン・アレー』も細野晴臣さんのソロも入っています。ぜひ聴いてみてください。若い人には『ティン・パン・アレー』が聴きやすいかな、と思います。

 

さて、大滝詠一さんに話を戻します。

 

ロンバケ』の一曲目、

 

「く~ちびる~つんと~とがら~せて~♪」

 

でお馴染みのあの曲のタイトルは『君は天然色』。曲はじわじわと始まり、「何がくるのか?」と思っているといきなり「く~ちびる~」が来る。

 

さながら「あれ、なんか後ろ姿がイイ感じ……」と思っていた女の子が急に振り返って「想像の100倍くらい可愛かったとき」のような。

 

「なんかイイ感じ」と思う理由は『ロンバケ』のジャケと『君は天然色』というタイトル。

 

『天然色』なんて言われると困ってしまいます。

 

興味しか湧かないですから。

 

『ルビー色』よりも美しく、『小麦色』よりも温かみがある。

 

「きっと天然色の君は素直さに満ちた美しい笑顔と純真無垢なアイデンティティを持っているんだろうなぁ」と想像してしまう。

 

聴かないわけにはいかないじゃないか!

 

と思っていると、「く~ちび(ry」と来るのである。

 

振り向かれた瞬間である。

 

心を奪われる瞬間である。

 

詳細な歌詞にも触れておきましょうか。

 

 

唇ツンと尖らせて、何かたくらむ表情は

別れの気配をポケットに隠していたから

机の端のポラロイド写真に話しかけてたら

過ぎ去った過去 しゃくだけど 今より眩しい

(歌詞ここまで)

 

色を失ってしまっていたことに気付く

 

懐かしさを感じながら

 

もう一度、取り戻したいと願う

 

でもきっとそれは無理なんだ、

 

だけど願ってしまうのは、

 

「はなやいで うるわしの カラーガール」

 

大滝詠一さんのキャッチ―なメロディ、凄まじいグルーブ感を歌詞に乗せる歌唱力を引き立てているのは、「たまらなく美しい言葉」です。

 

うるわしのカラーガールが振り向いてくれたような曲は、じつは色を失って天然色になってなってしまった想い人へ向けた曲だったのです。

 

君は天然色、Velbet Motel、カナリア諸島にて、と続く(動画がないのでぜひアルバムを手に取って聴いてみてください。アルバムの流れで聴いたほうがいいですし)名曲の流れ。

 

この3曲はロンバケの枠にとらわれず、大滝詠一さんの代表曲であることは間違いない。

 

しかし、ロンバケはその後落ち着きます。

 

「いい曲だけどな、最初の3曲に比べたら……」と思いながら最後まで聴き続けると、

 

『さらばシベリア鉄道』と出会えます。

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↑原曲動画がないので……。多くは語れませんが、ひとこと言えるのは、「絶対に原曲で聴いたほうがいい……」ということ。何から何まで格がちがいますよ。

 

私個人としては、『さらばシベリア鉄道』が一番の名曲だと思っています。

 

まず歌詞全文

 

 

 

かなしみの裏側に 何があるの?

涙さえも凍り付く 白い氷原

誰でも心に冬を 隠してると言うけど

あなた以上 冷ややかな人はいない

君の手紙読み終えて切手を見た

スタンプにはロシア語の小さな文字

ひとりで決めた別れを

責める言葉捜して 不意に北の空を追う

 

伝えておくれ

十二月の旅人よ

いついつまでも待っていると…①

 

この線路の向こうに 何があるの?

雪に迷うトナカイの かなしい瞳

答えを出さない人に

ついてゆくのに疲れて

行先さえない明日に飛び乗ったの

ぼくは照れて愛という言葉が言えず

君は近視まなざしを読み取れない

疑うことを覚えて

人は生きてゆくなら

不意に愛の意味を知る

 

①を2回繰り返し

 

 

 

以下、妄言。

 

 

タイトルは『さらばシベリア鉄道』。

 

普通に考えれば、『シベリア鉄道から去る人』を思うはず。

 

しかし、じつは違う。

 

何も言わずにシベリアに行ってしまった想い人の歌なのだ。

 

「あなた以上冷ややかな人はいない」

 

と、シベリアの地で想い人は思う。

 

氷点下の世界で、「なんだ、ここのほうが生きやすい」と。

 

思ってしまったのだ。

 

そして、思わせてしまった男は、

 

「北の空を追う」ことしかできない。

 

伝えるべき言葉を、

 

何一つ伝えることなく。

 

愛の意味を知る、。

 

男にはありがちなこと。

 

「わかってくれているだろう」

 

そうじゃない。

 

「言ってくれたことがすべて」

 

であり、

 

「動いてくれることがすべて」

 

なのだ。

 

男の中にある“甘え”を、女は決して許さない。

 

もちろんすれはすべてではない。

 

たったひとつだけ。

 

「私に対する甘え」を許さないのだ。

 

その他に対する甘えなら、すべて包容する覚悟が女にはあった。

 

だから、許せなかったのだろう。

 

シベリアに行ってまで、突きつけてやりたいと思った。

 

だから、

 

ほんのささいな紙切れひとつに、

 

真実を込めて、

 

シベリアから、手紙を送ったのだ。

 

だがしかし、

 

男は待つことしかできない。

 

いつまでも待っている、と、

 

いるはずのない旅人に伝言を頼む

 

なぜなら12月の旅人は、

 

けっしてシベリアには行かないからだ。

 

届けてもいけない想い。

 

動くことのできない自分。

 

男はきっと、

 

自分を「情けない」と思いたくないのだ。

 

だから、

 

「疑うことを覚えて人は生きていくなら」

 

と女のせいにする。

 

情けない自分を認めないために。

 

 

妄言、ここまで。

 

 

 

大滝詠一さんの圧倒的な歌唱力と、細部まで作りこまれた楽曲が引き立てるどうしようもない「情けなさ」。

 

それが『さらばシベリア鉄道』です。

 

寒さとは残酷なものです。

 

命の火を消さないために、我々生物は「生きる道」を探します。

 

私が熊や蛙なら土の中に潜りますし、魚なら温かい地方に移住します。

 

絶対的な寒さは、「生きる」ということを突き付けてくるから残酷なのです。

 

ティー・エム・レボリューションなら「よっせい!溶かしてやるからおるおっけーい!」と言いそうだが、それだけの熱量がほとんどの男にはない。

 

「情けない自分」に気付きつつも、目を背けてしまう。

 

そうあるべきではないと、『さらばシベリア鉄道』が教えてくれています。

 

いついつ…い、つまでも待っているなんて、言わないように。

 

***

 

 

大滝詠一さんの声はとてもズルい。

 

どうあっても耳に残ります。

 

だからこそ、歌詞が非常に大きな意味を持っているように思います。

 

大滝詠一さんの魅力を最大限に引き立てているのは間違いなく松本隆さんです。

 

美しい歌詞が歌声にのって攻め立ててくる感覚。

 

その類の衝撃は、『はっぴいえんど』にはありません。

 

それは大滝詠一さんがとんでもないシンガーであることを証明しています。

 

女房役によって、大滝詠一という男は光り輝いたのでしょう。

 

そしてその縁を結んだのは、他ならぬ細野晴臣さんであることも忘れてはいけません。

 

「ありがとう」の気持ちを込めて、「かくれんぼ」を聴きましょう。

 

fin.