ともしどブログ

宛名なしのお便り

【取材】東北バーテン女子が放つ「金は頑張らないでしか稼げない」

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「どうすればもっとお金を稼げるのかって、頑張る以外にしか方法がないと思うんです。」

 

東北女子の言葉にはリアリティがあった。

 

数年前の某日。私はコラム執筆の取材のため、東北地方を訪れていた。宮城県ならばそれなりにわかる。国分町を拠点に動けばなんとかなると思った。さいあく、ナンパでいい。でも、できればコンタクトを取ってから会いたい。そう考えた私は、マッチングアプリを利用し、気の利いた一言を添えるように努めて女性数人にメッセージを送った。運良く、女性と食事をするアポを取れた。場所は国分町。やはり、指定された場所は国分町だった。

 

東北女子の身なりは、シックで落ち着いた印象を受ける小奇麗な格好。黒のストールになかなかの衝撃を受けた。バーテンダーで20歳の女性の装いにしては、落ち着きすぎていたからだ。きっと「取材」という言葉に肩をすくめたからだろう。ほんのり申し訳ない気持ちになり、「似合ってますね」と言った。

 

お酒を飲むペースは、さすがと思うほどに早い。普段からよく飲んでいるらしく、下戸の私はウコンの力を信じ切ることに決め、ペースにつきあった。「お酒好きなんですね」「そうですね、興味はあります」嘘である。

 

しかし東北女子は20歳。酒が好きでも、強くはなかった。酔いが、さらに口が滑らかにさせた。「私、恋愛をする余裕はないんです、ごめんなさい。でも、私のような年代の女性が抱えている苦しみを聞いてもらいたくて。お金がなくて、田舎特有の親族関係に悩んで、何もできずにいる女性はたくさんいます。私もそのひとりです」面白い、と思った。恋愛は、環境に左右される。苦しみや悩みは、知っておくべきだ。「面白い」私はわざと口に出した。本当に苦しんでいる人は、関心を求めているはず。「もっと聞かせて」東北女子は、さらに熱くなった。

 

手取り13万円。月の休みは4日程度。フリーランスならまだしも、正社員だという。驚いた。特殊な仕事だから、ということではないらしい。「同世代で、大学に行けなかった人はだいたい私のような収入で苦しんでいます」一人暮らし。生活費でギリギリだろう。

 

私の知人は、東北暮らしで月収50万円。役員ではなく、作業員である。「建設業は儲かる」建設業に限った話なのかも、と思った。

 

「私にとって男性は、ごはんを食べさせてくれる人なんです」都会の女性の発言なら、メッシーを思い浮かべるところだ。しかし東北女子の顔には、余裕がない。マジのやつだ。マジでごはんを食べさせてもらわないと、生きていけないのだ。

 

ハングリー精神は、私にも向いていた。ごはんを食べさせてくれることだけではない。私のように、わけのわからない生き方をしても生活が成り立っていることが不思議だったようだ。「方法を教えてください」方法なんてないよ、たまたまうまくいっただけ。私ははぐらかしながら、適当なことを言った。少しだけ私の話もした。「なぜそれでうまくいくのかわからない」と東北女子は言った。運が良かっただけ。いまのままでいても、私には何も残らない。そう言うと、東北女子は顔を暗くした。

 

「頑張る以外にしか方法がない」と言ったのは、東北女子なりに目の前のことに一生懸命に取り組んでいるからだろう。そのうえで、希望がないのである。まわりに、希望を与えてくれる【例】がないのだ。

 

「環境を変えるしかない」のだとしても、東北女子はそれもできないらしい。「実家に住む場所と仕事を限定されていて、自由がないんです。勘当されたくはない……」泣いていた。悲痛だとしか、言いようがない。

 

人に恵まれたら、環境にも恵まれる、のではなかった。

 

国分町には、およそ吉祥寺ほどの人が溢れていた。にも関わらず、「国分町はきつい状況にある」らしい。信じがたかったが、リアリティを感じているから、本当にそうなのかもしれない、と思った。仙台と名古屋には金がある。イメージはそうだ。しかし、目に見えているものと実情には差異があるのかもしれない。

 

「お金がないからなんでもすると思っても、できることすらないんです」東北女子は言った。奴隷の心境に近いのだろう、と思った。がんじがらめで、希望がない。できるのは、与えられた目のまえの仕事だけ。どうにかして環境を変えたいけれど、できない。何かを犠牲にしなければならない。東北女子は、自分しか犠牲にできなかったのである。

 

まっとうに生きていて、十分な快楽を得られないというのは、国家としての大きな問題なのだろう。南関東で暮らしていては、知ることのできない事実だっただろう。そして、南関東で暮らしていても、明日は我が身なのだろう。

 

今朝、「日本の景気が良くなる」とテレビで騒いでいた。それを見ていて、私は東北女子との会話を思い出したのである。景気が回復する。そうなのかもしれない。金が動き、経済が安定し、東北女子が少しの安息を得られならいいな。そんなことを思った。

 

金は、人から人にしか、渡らないんだ。